2006年度アカデミー賞 雑感2

さまざまなジャーナルがアカデミー賞授賞式の記事を載せている。ナンダーラインやヤンアウン・カイティンチーなど多くの俳優がバスなどをチャーターして会場入りしているようだ。まぁ大変な騒ぎだったろうと想像できる。
まず今回の作品賞、監督賞、助演男優賞、主演男優賞 編集賞 5冠に輝いたのがHIVを扱ったシリアスなドラマで、ヤンアウンは父親役で6回目のアカデミー主演賞を得ている。初めての女優主演賞に輝いたナンダーラインは、1人3役を演じ自分がプロードュースした作品での受賞で、脚本賞と音響賞も得ている。


まずアカデミー賞は劇場公開の映画のみが対象で、ビデオ映画(VCD・DVD映画)などは対象ではない。しかし、毎年劇場公開の映画は年間15本から20本である。ヤンゴンやマンダレーを除けば大きな地方都市にしか映画館もない。逆にビデオ映画は年間400本製作されていると言われている。
ビデオ映画のスターをはビデオミンターと呼ばれ、ミャンマー全国的に人気が高い俳優もたくさんいるのだが、アカデミー賞的には全く無視される。以前から思うのは正直な話、かなり歪(いびつ)な映画賞であるわけだ。
また、6回主演男優賞を受賞しているヤンアウンは、ほとんどビデオ映画には出ていない。(と言うかビデオ会社の方からのオーダーがない)ミャンマーの男
連中からヤンアウンはほとんど人気がないのだ。
それで劇場用映画に集中できるメリットもある。何も彼の演技力にケチを付けているわけではない。日本人女優の麻生あかりさんが、ずいぶん前だがヤンアウンの撮影現場を実際にご覧になって、「やはり演技力がすごいですよ」と言われていたので、プロの言葉です説得力があります。しかし、受賞後のスピーチがすごかった「欲張りと言われようが、10回受賞できるように頑張る」と言うものだった。
また、ルインモウも3回、ルーミン2回、ジョーヘイン6回など、主役を演じれる人も5,6人しかいないので、当然複数の受賞が可能なのだ。これが本場アメリカのアカデミーで6回なんて賞とった人は1人もいないだろう。私が記憶している限りでは、キャサリン・ヘップバーンの主演女優賞3回というのがレコードだと思う。
1999年の12月だったと思う。その頃は前年度(1998年)の映画を対象にして次の年の12月にアカデミー賞の授賞式がトゥワナ競技場で行われていた。
友人達と4,5人で式場に行ったのがこの年だった。
 其の時の受賞者は主演男優賞が3回目のヤンアウン(この頃にはすでに実際の人気はないので最後のアカデミーと思っていたのに、、、、)、主演女優賞が2回目のソーミャトゥーザ, そしてナンダーラインが助演女優賞だった。
受賞後のスピーチで、ヤンアウンやソーミャトゥーザは、さすがに慣れていてまたスピーチの草案を決めていたのだろう、淀みなく流れるようなスピーチだった。
ナンダーラインははじめての受賞に、涙声で詰まりながらとつとつと、ミャンマー語を勉強して1年目の私にもほとんど分かるような優しいミャンマー語で「お父さん、お母さん、監督、そして私を応援してくれたファンの皆様、ありがとうございました」と話していた姿が印象的だった。
あれから9年、いよいよ待ちに待った主演女優賞の受賞である。しかも、自らプロードュースした作品での受賞、大輪の花の満開のような笑みを浮かべ、誰よりも長々とスピーチしていた。9年間の彼女の成長と成功がこのスピーチに全て現れていたと思う。
3,4年前、ミャンマー芸能界にある言葉が流行っていたそうだ。「ミャンマーには今2人しか女優がいないの。ナンダーラインとエンドラジョーズィンの2人だけ」それ程2人の活躍が目立ち。映画もビジネスである。集客がのぞめる女優を使いたいのだ。 今、ナンダーラインは30歳も大きく過ぎて太ってきたことも加え、ヒロインを演じるのがかなり難しくなってきている。
ライバルのエンドラはまだ20代後半しかも2年前に待望の主演女優賞を獲得している。ナンダーラインとしては本当にこの辺で主演女優賞が絶対に欲しかったはずである。おめでとうと祝福したい。
受賞映画はテレビで5分くらいシーンを紹介される。ナンダーラインはこの作品で傲慢な金持ちの女性、そしてその女性が年老いて死ぬまでの老婆の役(メイキャップがすごい、本当に80歳くらいに見える)そして、弟の娘の3つの役を見事に演じきった。メリルストリープ並に役柄によって声質まで変えて演じている。まさに見事な受賞だと思う。

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